みなさん、「うつ病」と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?
・自分に厳しく、生真面目な人がかかる病気。
・甘えているだけで気持ちの問題。頑張れば治るもの。
・自分自身が嫌いでトラウマがあり、自分に負けた人がかかる病気。
このようなことが挙げられるのではないでしょうか。
ストレスの多い現代社会で働いていれば、もはやうつ病は対岸の火事ではありません。
今回は、うつ歴7年の筆者が『うつ病とはどのような病気なのか』を調べ、まとめてみました。
うつ病とは?症状まとめ
■自覚症状
・気分が重い、気分が沈む、などの憂うつ感がある。
・元気がない、集中力がない、好きなことでもやりたくない、など意欲が低下する。
・細かいことが気になる、些細な物音が気になる、イライラする、など神経が過敏になる。
・悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、些細なことで悲しくなる、不安になる、死にたくなる、など情緒が不安定になる。
■周囲から見てわかる症状
・表情が暗く、涙もろくなる。
・落ち着きがなくなり、普段はしないようなミスが多くなる。
・飲酒量が増える
・性格が荒っぽくなる。
■身体症状
・食欲が増加あるいは低下し、胃の不快感、便秘になるなど消化器官に異常があらわれる。
・倦怠感が続く、肩こり、首の痛みなどがあり、疲労がとれなくなる。
・性欲がなくなる。
・頭痛、動悸、めまい、口が渇く、睡眠異常(不眠、早朝覚醒)
これらは一例で個人差があり、すべての症状が表れる訳ではありませんが、複数の症状を訴えるうつ病患者が多いようです。筆者にも身体症状の一部を除き、ほとんどの症状はあらわれていました。
筆者が特に悩まされた、4つの症状を紹介しようと思います。
睡眠障害
まずは、「睡眠障害」です。ごく最近まで困り果てていた症状で、7年目にしてやっと改善されてきました。
夜眠ろうと目を閉じても、日中や前日の出来事、次の日のことが気になってしまい眠れないのです。
運動をして疲れていても、睡眠が十分にとれていなかったとしても関係はなく、眠れないときはまったく眠れないのに、眠れる日は15時間近く眠り続ける、なんてこともありました。
体調不良
次に、「体調不良」です。
睡眠不足が関係しているとも考えられますが、ひどい頭痛に悩まされました。市販の鎮痛剤で対処していたのですが、痛みがない日はなく悪い時では4時間おきに服用していました。
さらに、節々の鈍痛や全身倦怠感もありました。
この症状は風邪をひいたときに高熱がでる、あの時の症状によく似ていました。起き上がっているのが辛く、会社は休みがちになりました。
仕事上のミス
続いて、「ミスの多発」です。
当時、筆者は事務職で働いていたのですが、今まで出来ていた仕事でミスをしたり、他愛もない業務で失敗をおかしたりということが続いていました。
記憶力や集中力の低下も顕著にあらわれ、度々自己嫌悪に陥りました。
人とのコミュニケーション
最後に、「コミュニケーション能力の低下」です。
人と話すのが苦痛に感じたり、説明するのが煩わしくなったりし、会話を避けるようになりました。言葉不足から生まれた誤解もそのまま放置し、良好だった人間関係は瞬く間に崩れていきました。
結局この事務職は、出勤状況や仕事上のミスが問題となり、退職を余儀なくされました。
うつ病の原因は?脳のメカニズム
次にうつ病のメカニズムについてですが、実はまだ、きちんと解明されていません。
特定の原因があって発症するものではなく、いくつのもの要因が重なって発症するというのが現代医学の見解で、脳内にある神経伝達物質(=化学物質)の働きが関係していると推測されています。
うつのキーとなる神経伝達物質
うつ病にとって、重要な働きをしているといわれている神経伝達物質が、【セロトニン】、【ノルアドレナリン】、【ドーパミン】です。
これらをアミノ系神経伝達物質といい(他にも、アドレナリン、ヒスタミン等があります)、総称して【モノアミン】と呼びますが、うつ病はこの【モノアミン】が減少することで引き起こされる、という説(モノアミン仮説)があります。
また逆に、【モノアミン】が減ることでうつ病になるのではなく、【モノアミン】の情報の受け皿である【モノアミン受容体】が増えることによってうつ病になる、という説(モノアミン受容体仮説)も近年唱えられ始めました。
その他の仮説
他にも、
・神経細胞仮説
・脳の海馬領域における神経損傷仮説
など、仮説はつきません。
うつ病が身近な病気として認知された1980年代以降、今日まで解明がなされていないということは、「脳内がいかに複雑で未知なるものか」ということですね。
うつ病で悩んだ時はどうする?
今現在、ご自身やご家族がうつ病で悩んでおられる方はたくさんいると思います。
筆者はたいしたアドバイスはできませんが、『うつ病を受け入れること』
そして、『自分にあった治療薬、治療法を根気よく探すこと』が大事なのではないかと思います。
最近、睡眠障害との折り合いがつくようになったと前述しましたが、ここに至るまで様々な方法や、何種類もの治療薬を試してきました。
正直、通院を投げ出したことも何度もあります。
ですが、結局は病気ですので、自分一人でどうにかなるものではないことに気付き、治療を再開し現在に至っています。一人で、または家族だけで完治をしようと苦しんでいる方がいたら、まずは勇気をもって、病院のドアを叩いてみてください。
きっと、何か新しい道が開けてくることと思います。
日常的なうつ病の原因は、ストレスが関係?
うつ病になる原因はストレスが関係していると考えられており、大まかに次のように分けられます。
・慢性的な疲労、脳血管障害、甲状腺機能異常、降圧薬の服用などの【身体的要因】
・仕事や財産の喪失、家庭内不和、人間関係のトラブル、家族の死亡などの【環境的要因】
また、ストレスといっても悪いことだけではなく、
・就職、転職、転勤、引っ越し
・妊娠、出産、育児
など、環境の変化や嬉しい出来事でも関係してくると推測されています。
周りとの関わり方
先ほども書きましたが、筆者はうつ病を患わって7年が経ちます。
当時は何がストレスになっているのか分からず、また、周りの方たちも筆者の負担を減らすよう努力してくれましたが、すぐに回復することはありませんでした。
あの時とはだいぶ環境が変わった今、『何がきっかけとなってうつ病を発症したのか』をテーマに、当時を振り返ってみたいと思います。
仕事を振り返ると・・・
今から7年前、筆者はとある金融機関の事務職に契約社員として働いていました。
ある時、金融機関内でシステム更改がありました。このプロジェクトには、準備期間に1年以上を費やすほど大掛かりなもので、それまで当たり前だった定時帰宅はなくなり、残業をする日々が続くようになりました。
契約社員ということで、周囲の方たちは定時退社を勧めてくれていたのですが、「こんな自分でも役に立てることがあるなら」「みんなの負担を少しでも軽くしたい」と、率先して残業をするようになったのです。
そして、仕事を頼まれることで自分の価値を見出し、いろいろな仕事を抱えるようになっていきました。
休日出勤、残業漬けの毎日
思い返すと異常な状況ですが、当時の筆者は会社が許す限りの残業をし、休日出勤やサービス早出までしていました。そのような労働状況は正社員の方でさえ、ごく一部の上席だけしかしていませんでした。
確かに仕事はたくさんありました。しかし、なぜ契約社員である筆者がそのような働き方をしていたのでしょうか?
最終学歴が高卒の筆者は、それまで肉体労働しかしたことがありませんでしたが、年齢のことや将来を考え、知識もパソコンスキルもないまま事務職に転向しました。
仕事でのコンプレックスと多忙な日々
しかし周りはみんな大卒で、WordやExcelは使えて当たり前。そんな環境にコンプレックスを感じていたのです。
冷静に考えられる今だからわかることですが、とにかく自分に自信がなく、労働時間を増やすことで自分の存在価値を確認していました。通勤時間は電車で片道1時間かかり、帰宅するころには、クタクタに疲れていました。
すぐに軽い夕飯を済ませ、休む間もなく入浴し、4時間程度の睡眠をとったらもう翌日、といった状況が続く日々。
休日は当然疲れているため一日中眠っており、どこかへ出掛けるなど何かを楽しむといったリラックスをする時間は、まったくありませんでした。
仕事とトラウマ
そして、システム更改まであと半年という頃のことです。
この頃になると残業や休日出勤をする人数も増え、一丸となって仕事をしている充実感のようなものもありました。ところが、毎日定時で退社している男性社員が、同じグループ内にいることに気が付いたのです。
仮にAさんとしましょう。Aさんは、筆者が入社した当時から変わり者で有名でした。周りの人が忙しくても自身の仕事でなければ手伝おうとせず、自分が納得できなければ仕事に取り組み始めない、という人。
それまで、当たらず障らず接していた筆者ですが、さすがにこの頃になると関わらないままではいられず、Aさんと組んで業務を行なう状況が増えていきました。
しかし、なんとか定時退社を貫こうとするAさんの姿勢は、自分勝手で協調性がなく、距離をおきたいという印象を受け、苦手な人になりました。
そんな時、筆者の中で嫌な記憶が蘇ったのです。
筆者の過去〜家族との関係〜
ここで少し、筆者の育った環境について説明をします。
筆者はとある港町で、三姉妹の次女として育ちました。父親は鮮魚市場に勤めるチャキチャキの下町人間で、趣味はお酒とパチンコで、特にお酒にはめっぽう目がなく、仕事が終わると日付が変わる頃まで毎日飲み歩く、という生活を毎日のように送っていました。
お酒に飲まれてしまうタイプで、気に入らないことがあった日は、声を荒らげたり物を壊すなどの行動をとり、時には手をあげるような人。絶対君主で父親の言うことはすべて正しいと教わり、体の大きい父親だったため恐怖の対象でした。
しかし、自分が成長するにつれて、「お父さんが言うことがすべてではない。違う考え方も出来る」「お父さんは間違ったことを言っている」という感情が芽生え始めたのです。
父親への反抗
そして、それを本人に言うも「俺は間違っていない。子供に何がわかる」と叱られ、最終的には「子供のくせに口答えをするな。誰のおかげで飯が食えていると思っている。言うことが聞けないなら俺の家から出ていけ」
と怒鳴られ、子供たちが泣きながら謝り事態が収束する、というのがお決まりのパターンでした。
ですが、子供たちも年頃になると「こんな親子関係はおかしい」と思うようになり、泣きながらも自分の意見をきちんと伝えるようになったのです。
ある日、いつもの如く「出ていけ」と怒鳴る父親に、平和的解決は望めないと悟った姉が家を出たことを皮切りに、母親は別居を決意し筆者も妹を連れて家を出ることにしたのです。
父と母の離婚
以来、父親とは疎遠となり、母親の離婚をきっかけに筆者は父親の戸籍から除籍をしました。
話を戻しますが、そんな憎しみにも似た感情しか抱いていない父親と、Aさんが「とても似ているな」と感じるようになったのです。
客観的に見れば、似ても似つかないのかもしれません。
ですが、当時の筆者には、周りのことを考えない自己中心的なところや、自分は間違ったことをしていないという態度が、「父親と同類」と思えてしまったのです。
身体の異変、そして現れた初期症状
その後、システム更改をなんとか乗り切り、静かな日常に戻りつつあったある時、体調の異変に気が付いたのです。
うつ病だと分からなかった
うつ病は精神疾患であることは周知のとおりですが、うつ病と症状が似ている病気がたくさんあることはご存知でしょうか。
大まかに挙げるだけでも、これだけの病気にうつ病と似た症状があらわれます。
・更年期障害 (頭痛、不眠、疲労、倦怠感、イライラ、憂うつ感、肩こり、関節痛)
・自律神経失調症(頭痛、不眠、慢性的な疲労、微熱、イライラ、憂うつ感)
・統合失調症 (意欲低下、洗面・入浴など衛生面で無頓着になる)
・適応障害 (頭痛、不安感、抑うつ、意欲低下、倦怠感)
・鉄欠乏性貧血 (頭痛、頭重感、不眠、疲労、倦怠感、イライラ、憂うつ感、肩こり)
・若年性アルツハイマー(頭痛、不眠、不安感、抑うつ、意欲低下)
※うつ病と似ている症状のみを記載しています。また、実際にあらわれる症状には個人差があり、すべての症状があらわれるとは限りません。
体調が悪く「精神的な病気かもしれない」と推測はできても、「何の病気なのか」は、なかなかすぐに辿り着けないことも多いかと思います。
筆者の場合もそうでした。
風邪か?また、他の病気か?
体調が悪くなり始めたときは風邪かと思い、まず内科を受診しましたが、その後色々な病院・診療科を転々としました。
ここからは、『心療内科に出会うまで』を、筆者の足取りを振り返っていきます。
7年前の当時、筆者が抱えていた主な症状といえば、
・頭痛
・微熱(36度8分から37度5分)
・全身倦怠感
・喉の違和感(引っかかり)
・関節痛
・不眠
と、いったものでした。
かかりつけの診療所へ
そこでまず、かかりつけである内科の個人診療所へ足を運ぶことに。
この病院には、12年前に緊張型頭痛を発症してからお世話になっていて、胃炎になった時のことや喘息の程度など、筆者の病歴を把握してくれていました。
しかし、処方薬を服用しても一時的に良くなるだけで、しばらくすると元のとおり具合が悪くなってしまうのです。
通院何度目かのある時医師に言われたのは、「当院ではわからない大きな病気かもしれない。紹介状を書くので、総合病院を受診してはいかがでしょうか」という言葉でした。
紹介された総合病院の内科はひどく混雑しており、問診・聴診・血液検査のみで初日は終了しました。
2週間後に検査結果を聞くため再診予約をしましたが、初回は一般的な鎮痛剤しか処方されませんでした。
そして、検査の結果「一般内科ではわからない」と言われ転科をすることになり、『膠原病・リウマチ内科』を受診するよう勧められたのです。
膠原病・リウマチ内科を受診
聞きなれない診療科でしたので、受診する前に調べてみました。
・膠原病
膠原病は、「関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚・多発性筋炎、血管炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病」など、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が見られる病気の総称です。
症状は、原因不明の発熱や湿疹、関節の痛みなどが共通しており、比較的若い女性に多く見られる病気です。
およそ、90~120万人の患者がいると推測されています。
・リウマチ(関節リウマチ)
関節リウマチは膠原病の一種で、微熱、食欲減退、全身倦怠感、関節の腫れや痛み、などの全身症状があらわれます。
30~50代の女性に好発し、およそ70~100万人の患者がいると推測されています。
なるほど、この診療科を勧めたのも納得がいきました。
しかし、結果は・・・
しかし検査の結果、原因となる異常は見られず、担当医師が下した診断は「慢性疲労症候群」という病名でした。
・慢性疲労症候群
慢性疲労症候群の主な症状は、微熱、頭痛、のどの痛み、身体および思考力両方の疲労感、筋肉痛、不眠と過眠、気分障害などで、風邪に似た症状がいつまでも長引くような状態で発症することが多く、身体を動かせないほどの疲労が6か月以上の長期間にわたって続きます。
休んでいても改善せず、摂食障害や不眠などを伴っていて、血液検査、ホルモンの検査、内臓や脳神経系の検査など、全身の検査をいくら行なっても異常が見つからない場合に、慢性疲労症候群が疑われます。
この頃、病院や診療科を転々とすることや、長い待ち時間に疲れを感じていた筆者は、この総合病院ではなく、確実に治療をしてもらえる病院へ行くことを決意しました。
インターネットで探したところ、県内にこの病気の第一人者の医師がいることが分かり、受診することにしました。
第一人者の医者の元へ
紹介状がなかったため事前に電話で問い合わせをしたところ、「受診は可能ですが3か月待ちの状態です」という回答がありました。
それでも、その医師に担当してもらいたかった筆者は予約をいれ、その間は、かかりつけ医院の処方薬と市販薬を服用し、特に具合が悪い日は会社を休むなどして過ごしました。
体調不良で個人診療所を訪ねてから、7か月が経とうとしていました。
そして3か月後、電車を乗り継ぎ2時間かけて、専門病院を訪ねることに。
きちんと説明が出来る余裕はないほど、精神的にも肉体的にも弱った状態だったので、これまでの経緯や服用薬がわかるよう、詳細なメモを作成し専門医師に渡しました。
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衝撃の診断結果
10分程度の問診後、すぐに診断が。
「残念ながら、と言って良いのかわかりませんが、筆者さんは『慢性疲労症候群』ではありません。」
聞いたとたん、涙があふれました。喜びからではなく絶望の涙でした。
「どこの病院へ行き何科を受診すれば良いのか」「筆者を治してくれる医師はどこにいるのか」「いつになったら以前のように、働きマンに戻れるのか」
そんな思いが頭の中を巡り、近くにあった見知らぬ土地の公園で一人泣き続けました。
数日後、落ち着きを取り戻した筆者は、診察終了間際に専門医が言っていた言葉を思い出しました。
「ご自宅近くの心療内科に行ってみてはいかがでしょうか」
そして、地元のメンタルクリニックへ通うことになったのです。