Girl and bipolar disorder
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これまで、色々な種類のうつ病についてお話ししてきましたが、今回はこれまでと若干違った特徴を持つ『躁鬱病(双極性障害)』についてお話しします。

『躁鬱病(双極性障害)』とは?

双極性障害は気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。激しい躁状態とうつ状態のある双極Ⅰ型と、軽い躁状態(軽躁状態)とうつ状態のある双極Ⅱ型があります。

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双極Ⅰ型の症状

  1. 高揚感があり、初対面であろうと誰かれかまわず話しかける、2時間以内の睡眠時間でも問題なく動き回るなど、活動的になる
  2. 実際の自分よりも過剰に自身を大きく感じる傾向(自尊心の肥大)が顕著にあり、人の話に耳を貸さないなど、傲慢で根拠なく自信に満ち溢れているため、上司と大ゲンカの末辞表を叩きつけるなど、仕事や社会的信用を失う行動をとる
  3. 過度なほど楽観的になっているため、買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込み、散財する

そして、躁でもなく鬱でもないフラットな状態(寛解期)を経て、うつ状態へ移行します。

 

このときのうつ状態とは、『うつ病』と同じく、抑うつ気分と興味・喜びの喪失が中核症状で、これらを含めて、早朝覚醒、食欲の減退または亢進、体重の増減、倦怠感、意欲の低下、自責感、といったさまざまな症状のうち、5つ以上の症状が2週間以上続きます。

双極Ⅱ型の症状

双極Ⅰ型よりも軽い躁状態である軽躁状態が特徴の双極II型は、あまり周囲に迷惑をかけることはありません。いつもよりも妙に活動的で積極的になり、周囲は少し行き過ぎという感じを受ける場合があります。

 

「何だかあの人らしくない」「元気すぎる」と思われるような軽躁状態が少なくても4日間以上続きます。本人は調子が良いと感じており、トラブルも起こさないため自身では気がつかず、周りからも見過ごされがちです。しかし、摂食障害や不安障害、アルコール依存などが合併しやすく、実は深刻です。

 

寛解期を経て、双極Ⅰ型と同様のうつ状態があらわれます。躁状態と軽躁状態に共通して言えることは、多くの場合、本人が自分の変化を自覚できないということです。

『うつ病』と『躁鬱病(双極性障害)』の違いとは

『定型うつ病』と『躁鬱病(双極性障害)双極Ⅰ型』の症状を挙げ、比較します。

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このように、精神的な部分や行動面で真逆ともいえる症状があらわれます。

『躁鬱病(双極性障害)』の原因

『躁鬱病』の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、これまでの研究から様々なことが分かってきました。

・【遺伝】

『躁鬱病』は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。

 

・【体質】

『躁鬱病』になりやすい体質や性格の人が、ストレスなどの誘発要因に接したことで発病することもあり得ると分かってきました。

 

・【環境】

ストレスや生活リズムの乱れが双極性障害に関係している、という説もあります。

結婚や離婚、身近な人との死別や家族の不和、転勤や転居、異動や転職などの、環境の変化に対応することが出来ないと、大きなストレスとなり、それらが誘因となって発症することがよくあります。

 

・【性格】

1930年頃に精神科医の下田光造氏が、躁鬱病の病前性格として《執着気質》を提唱しました。

執着性格の基礎には一度起こった感情が長く持続し、かつ増強するという感情の経過の異常があることに着目し、この異常にもとづく性格特徴として、仕事熱心、凝り性、徹底的、正直、几帳面、強い正義感、ごまかしやずぼらができない、などをあげている。

現在では、

  • 気難しくいつも不機嫌で怒りっぽく、周囲に対して批判や不満を常に抱く《刺激性気質》
  • 社交的で明るくユーモアがあり周囲に対して気配りをかかさない《循環気質》
  • 循環気質を極端にした性格で、いつも自信に溢れ、行動派のリーダーとして一目置かれる《発揚気質》

などが、『躁鬱病(双極性障害)』の病前性格として挙げられています。

脳内メカニズムは?

『躁鬱病(双極性障害)』の原因と同様に、脳内メカニズムもはっきりとは解明されていません。

ですが、理化学研究所が発表した「双極性障害の発症原因は、脳細胞内のミトコンドリアの機能異常にある」という「ミトコンドリア仮説」が有力視されています。

「ミトコンドリア仮説」とは…

ミトコンドリアは細胞内にある小器官で、エネルギー物質を生産する働きのほか、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度調整などをつかさどっています。

 

『躁鬱病』で亡くなった患者を調べたところ、一部においてミトコンドリアDNAに異常があることが発見された。ミトコンドリアの機能障害がカルシウム調節に悪影響を及ぼし、それが双極性障害の発症の一因になっているのではないかと考えられる。

『躁鬱病(双極性障害)』の人への接し方

躁状態かうつ状態かによって、注意点が変わります。病状を理解し臨機応変に対応しましょう。

○躁状態期

躁状態期の人は、怒りやすく暴言をはくこともあります。言われた人は傷つきますが、「病気が言わせているのだから」と受け流すか、同じ痛みをもつ家族や親しい友人などに愚痴をこぼして、わだかまりを消化するよう心がけてください。

 

⦿躁状態時の接し方まとめ

・感情的にならないよう用心しつつ、行き過ぎた行為は注意する
・「可笑しなことを言っている」など、病状を蔑むような発言は控える

 

○うつ状態期

心、脳、身体をきちんと休ませることが最も重要です。
今まで楽しいと感じていたことも、そうは思えなくなっている状態ですので、無理に誘うことは控えてください。
また、うつ状態を本人はもどかしく感じていることがあるので、励ますようなことはせずそっと見守ってください。

 

自殺リスクは?

うつ状態が重篤になると自殺願望や希死念慮があらわれることがあります。

2011年、デンマークにおいて双極性障害患者の自殺既遂リスクを調査した結果が発表されました。『躁鬱病』患者が自殺を遂げた数は、様々な精神疾患のうち男性で1位、女性で2位という高い比率であることが明らかになっています。

 

このことからも分かるとおり、『躁鬱病(双極性障害)』と自殺は危険な関係性を持っています。

 

自殺をほのめかすような発言があった場合はすぐに否定するのではなく、本人の話をよく聞き、きちんと受け止めている姿勢を見せてください。本人が落ち着いてから話をし、「死んでしまったら家族や友人はとても悲しむ」という思いをきちんと伝えることが大切です。

口約束でも良いので「自ら死なない」と約束をすることが、自殺を思い止まらせることにもなります。

⦿うつ状態時の接し方まとめ

  1. 話をよく聞く、聞こうとする姿勢を見せる
  2. 一緒にいる時間を増やし、生活のサポートをする
  3. 躁状態時の発言を責めることはしない
  4. 「頑張れ」と励ますことや、本人の意に反した外出を勧めない

○寛解期の接し方

職場など社会復帰をする時は、「今まで周囲に迷惑をかけてきた」という気持ちが強くなり、必要以上に頑張る傾向にあります。その折々で目標をさだめ、今は何をやるべきか何はやらなくても良いのかを明確にすることが大切です。

 

復帰後しばらくは気分の安定を第一に考え、現状を維持することが何よりも重要です。

●『躁鬱病(双極性障害)』の治療法

『躁鬱病(双極性障害)』の基本的な治療法は「薬物療法」と「精神療法」があります。

○薬物療法

主に、気分安定薬を服用します。不眠がある場合には睡眠薬を、重症なうつ状態の場合には抗うつ薬や抗精神病薬を追加して使うなど、症状に応じて処方は変化します。

○精神療法

・心理教育

…医師からの一方通行の疾患教育ではなく、患者と同じ目線で、疾患に対しての情報共有や理解を深める方法です。

 

・認知行動療法

…陥りやすい否定的なとらえ方に自分自身で気づいてもらい、その行動への受け取り方を変えることで、自らが適応的なとらえ方を選択できるように訓練します。

 

・対人関係療法(IPT)

…「重要な人の喪失(身近な人の死や離婚)」「自分の役割への不満(独立したいなど今の地位への不満)」「自分の役割の変化(結婚、出産、昇進など)」の3つの対人関係上のテーマについて、対人関係の捉え方を変えていく方法を検討します。

 

・社会リズム療法(SRT)

…毎日の起床、入眠、食事、出勤などさまざまな活動時間を記録し、リズムが乱れる原因を検討し、修正していく方法です。

 

・通電療法(ECT)

…1930年代からある古い治療法で、電極を頭皮上につけ脳内に刺激電流を流すことで治療に結びつける方法です。

効果、副作用

現在は全身麻酔で意識をなくし、筋弛緩薬を使いけいれんを起こさない状態で実施しますので、従来の方法より副作用が少なくなっています。

有効率が高く、即効性であるなどメリットがある反面、麻酔が必要なことや、術後一時的に記憶が薄れるなどの副作用もあるため、安全性に配慮して慎重におこなう必要があります。

最後に

ここまでまとめて感じたことは、『躁鬱病』は他の『うつ病』よりも、より周囲のサポートと理解が必要とされる疾病である、ということです。

「うつ状態」だけ「躁状態」だけでも対応が難しいのに、それらが交互に押し寄せるこの病気は、本人も周囲の人も病気に振り回されてしまうことでしょう。

 

『うつ病』には【波】が必ずあります。

悪い状態の後には寛解期が必ず来ます。この【波】をきちんと理解することが重要です。

 

筆者は寛解期に入って6か月が経とうとしています。この状態がいつまで続くのかは解りませんが、【波】を理解し出来ることから続けていこうと思っています。

本人も家族も思い詰めてしまうことの無いよう、医師や医療ソーシャルワーカーを頼り、治療を進めていくようにしてください。by CELICA